灯
はじめに断っておきたいのですが、ボクはユタでもカミンチュ(神人)でもありません。
ましてやセジ(霊力)が高いわけでもサーダカンマリ(生まれ)でもありません。
こんな霊能力ゼロのボクですが、奇妙なモノを目撃したことがあります。
小学校三年のときの出来事ですから、今から数十年前になります。
その日ボクは、クリスマスに親からおこずかいをもらいました。
クリスマスなのにプレゼントではなくおこずかい・・・というのもヘンな話ですが、
たまたまおこずかいをもらったのが、クリスマスの日だった、ということです。
当時はクリスマスのプレゼントどころか、クリスマスパーティを開くことも珍しい時代でした。
とにかく、おこずかいをもらったボクは、その金をにぎりしめ、早速、近所の「一銭マチヤ」(駄菓子屋)に走りました。
その一銭マチヤでは、いつもおばぁちゃんが独りチョコンと座って店番をしていて、その日もおばぁちゃんが店頭にいました。いつものように、にこにこと笑っていました。
ボクは、クジ引きにしようか美味しそうに並んでいる駄菓子にしようか、悩みに悩みながら商品棚を覗き込んでいました。
なかなか決まらなくて、ふと、おばぁちゃんの顔を仰ぎ見たとき、一点に目が釘付けになりました。
にこにこ微笑んでいるおばぁちゃんの頭の上に、なにかがユラユラ揺れているのが見えるのです。
青白い炎のようなものでした。
さっき店に走り込んできたときにはまったく気づかなかったのですが、おばぁちゃんの頭の上に青白い炎のようなものが揺れているのです。
正確にいいますと、おばぁちゃんの頭頂部の上5センチくらい離れてブルーの靄のようなもの見えるのです。
それは、コンビニなどで加湿器から出したばかりの肉まんの上部にブワッと湯気が立ち、収束され、中空に立ち登る感じなのですが、収束された部分が炎のように揺れ、しかも青白いのです。瞬間ではなく、そこにあり続けているのでした。
あまりの突然のことで、ボクはびっくりし、そのまま何も買わずに店を飛び出しました。
店を出たボクは、自分がおかしくなったのだと思い、道ゆく人、すれ違う人、すべての人の頭の上を凝視しました。
しかし、あの青い炎が頭にある人なんて、ほかに誰もいません。普段の、当たり前の日常の景色が広がっているだけでした。青い炎は、見間違いだと自分に言い聞かせ、納得するようにしました。
ただ、怖くて、その日は一銭マチヤには行きませんでした。
翌日・・・・
ボクは友だちと遊ぶために、近所の空き地へ向かいました。
空き地へは、一銭マチヤの前を通らなければならないので、ちょっとイヤでした。
店の前を通るときは、できるだけ店内を見ないようにしよう・・・などと考えながら歩を進めました。
幸か不幸か、店は閉まっていて、店の雨戸に「臨時休業」の紙が貼られていました。理由は知るよしもありません。
内心ホッとしながら店を通り過ぎたとき、前方から小柄なおばぁちゃんが歩いて来るのが見えました。
一銭マチヤのおばぁちゃんでした。けっして幽霊(ボクには幽霊は見えません)などではなく、間違いなく、実在する、生きている一銭マチヤのおばぁちゃんでした。
・・・・・道ゆく他の人には無いのに・・・やっぱり・・・そのおばぁちゃんの頭の上には・・・まだ・・・青白い炎がありました。
・・・・・目を強く閉じ、再び開けて見ても・・・・やっぱりあります。
・・・・・目をこすって、見直しても・・・・青い炎は消えません。
・・・・・それどころか昨日よりはっきり燃えている感じさえしました。
ボクは、何も言えず、何も見えなかったそぶりで、おばぁちゃんとすれ違いました。
・・・・その翌日・・・・おばぁちゃんが、急逝したことを知りました。死の直前まで、歩けるほど元気だった、とも聞きました。
おばぁちゃんの「死」に対して、不思議とボクの中で驚きの感情は湧きませんでした。
ボクが見た青い炎と「死」というものが、因果関係あるのかさえボクには分かりません。
でも、なんかしらの関連がないともいいきれない感覚がありました。
最近話題になったオーラなのかも知れませんが、ボクにはオーラは見えません。
・・・・・何十年と生きてきて、青い炎を見たのは、後にも先にも、その一度きりでした・・・ついこの間までは。
・・・・・正直、青い炎のことなど、すっかり記憶から消えていました。幼いころの夢か幻なのだろう、とさえ思い始めていました・・・・先月までは。
そう、先月、ボクは帰宅途中の車の中から「青い炎」を、また見てしまいました。
一気に記憶が「あの時」にフラッシュバックしました。
帰宅ラッシュの渋滞の車列でした。まだ陽は沈んでなく、明るい街中でした。
交差点の信号待ちで、ボクの車の前に停まったワゴンタイプの黒い軽自動車の中です。
若い小柄な女性がハンドルを握っていました。一人でした。
後ろのウインドウ越しに、はっきりと運転手の横顔と後頭部が見えました。すぐ前の車ですから、距離も離れていません。
さりげなく視線をやったその若い女性の頭の上、中空に、あの青い炎が見えたのです。一銭マチヤのおばぁちゃんの炎と、まったく同じでした。
信号が変わり、黒いワゴン車は発車したのですが、ボクの目は、その青い炎に吸いつけられたままでした。
後ろに並んだ車のクラクションで急かされるまで、ボクの視線は、唖然と青い炎を追い続けていました。
ワゴン車は、次の交差点を右折するようで、ウインカーを点け車線を変更しています。ボクは直進です。
ワゴン車を追っかけて、「青い炎」のことを告げるべきか、正直、迷いました。
話したって、信じる訳がないか・・・まてよ・・・死ぬなんてことはないにしても、「気をつけて運転した方がいい」なんて、余計なアドバイスをしたほうがいいか、などとも考えました。いや死ぬと決まったわけじゃあるまいし・・・いやいや、こんな話、誰も信じないどころか、明らかにヘンな人扱いされるだろうな、とも思いました。なんの根拠もない不吉な話で、他人を余計な不安に陥れるのは人間としてどうなんだろう・・・とも。
・・・でも・・・
結局、ボクは、また「気のせい、気のせい・・・」と呪文のように、自分に言い聞かせて、渋滞の車列に並んだのでした。
・・・でも・・・また、あの、青い炎の呪縛に、しばらくは、からめとられそうなのです。
ましてやセジ(霊力)が高いわけでもサーダカンマリ(生まれ)でもありません。
こんな霊能力ゼロのボクですが、奇妙なモノを目撃したことがあります。
小学校三年のときの出来事ですから、今から数十年前になります。
その日ボクは、クリスマスに親からおこずかいをもらいました。
クリスマスなのにプレゼントではなくおこずかい・・・というのもヘンな話ですが、
たまたまおこずかいをもらったのが、クリスマスの日だった、ということです。
当時はクリスマスのプレゼントどころか、クリスマスパーティを開くことも珍しい時代でした。
とにかく、おこずかいをもらったボクは、その金をにぎりしめ、早速、近所の「一銭マチヤ」(駄菓子屋)に走りました。
その一銭マチヤでは、いつもおばぁちゃんが独りチョコンと座って店番をしていて、その日もおばぁちゃんが店頭にいました。いつものように、にこにこと笑っていました。
ボクは、クジ引きにしようか美味しそうに並んでいる駄菓子にしようか、悩みに悩みながら商品棚を覗き込んでいました。
なかなか決まらなくて、ふと、おばぁちゃんの顔を仰ぎ見たとき、一点に目が釘付けになりました。
にこにこ微笑んでいるおばぁちゃんの頭の上に、なにかがユラユラ揺れているのが見えるのです。
青白い炎のようなものでした。
さっき店に走り込んできたときにはまったく気づかなかったのですが、おばぁちゃんの頭の上に青白い炎のようなものが揺れているのです。
正確にいいますと、おばぁちゃんの頭頂部の上5センチくらい離れてブルーの靄のようなもの見えるのです。
それは、コンビニなどで加湿器から出したばかりの肉まんの上部にブワッと湯気が立ち、収束され、中空に立ち登る感じなのですが、収束された部分が炎のように揺れ、しかも青白いのです。瞬間ではなく、そこにあり続けているのでした。
あまりの突然のことで、ボクはびっくりし、そのまま何も買わずに店を飛び出しました。
店を出たボクは、自分がおかしくなったのだと思い、道ゆく人、すれ違う人、すべての人の頭の上を凝視しました。
しかし、あの青い炎が頭にある人なんて、ほかに誰もいません。普段の、当たり前の日常の景色が広がっているだけでした。青い炎は、見間違いだと自分に言い聞かせ、納得するようにしました。
ただ、怖くて、その日は一銭マチヤには行きませんでした。
翌日・・・・
ボクは友だちと遊ぶために、近所の空き地へ向かいました。
空き地へは、一銭マチヤの前を通らなければならないので、ちょっとイヤでした。
店の前を通るときは、できるだけ店内を見ないようにしよう・・・などと考えながら歩を進めました。
幸か不幸か、店は閉まっていて、店の雨戸に「臨時休業」の紙が貼られていました。理由は知るよしもありません。
内心ホッとしながら店を通り過ぎたとき、前方から小柄なおばぁちゃんが歩いて来るのが見えました。
一銭マチヤのおばぁちゃんでした。けっして幽霊(ボクには幽霊は見えません)などではなく、間違いなく、実在する、生きている一銭マチヤのおばぁちゃんでした。
・・・・・道ゆく他の人には無いのに・・・やっぱり・・・そのおばぁちゃんの頭の上には・・・まだ・・・青白い炎がありました。
・・・・・目を強く閉じ、再び開けて見ても・・・・やっぱりあります。
・・・・・目をこすって、見直しても・・・・青い炎は消えません。
・・・・・それどころか昨日よりはっきり燃えている感じさえしました。
ボクは、何も言えず、何も見えなかったそぶりで、おばぁちゃんとすれ違いました。
・・・・その翌日・・・・おばぁちゃんが、急逝したことを知りました。死の直前まで、歩けるほど元気だった、とも聞きました。
おばぁちゃんの「死」に対して、不思議とボクの中で驚きの感情は湧きませんでした。
ボクが見た青い炎と「死」というものが、因果関係あるのかさえボクには分かりません。
でも、なんかしらの関連がないともいいきれない感覚がありました。
最近話題になったオーラなのかも知れませんが、ボクにはオーラは見えません。
・・・・・何十年と生きてきて、青い炎を見たのは、後にも先にも、その一度きりでした・・・ついこの間までは。
・・・・・正直、青い炎のことなど、すっかり記憶から消えていました。幼いころの夢か幻なのだろう、とさえ思い始めていました・・・・先月までは。
そう、先月、ボクは帰宅途中の車の中から「青い炎」を、また見てしまいました。
一気に記憶が「あの時」にフラッシュバックしました。
帰宅ラッシュの渋滞の車列でした。まだ陽は沈んでなく、明るい街中でした。
交差点の信号待ちで、ボクの車の前に停まったワゴンタイプの黒い軽自動車の中です。
若い小柄な女性がハンドルを握っていました。一人でした。
後ろのウインドウ越しに、はっきりと運転手の横顔と後頭部が見えました。すぐ前の車ですから、距離も離れていません。
さりげなく視線をやったその若い女性の頭の上、中空に、あの青い炎が見えたのです。一銭マチヤのおばぁちゃんの炎と、まったく同じでした。
信号が変わり、黒いワゴン車は発車したのですが、ボクの目は、その青い炎に吸いつけられたままでした。
後ろに並んだ車のクラクションで急かされるまで、ボクの視線は、唖然と青い炎を追い続けていました。
ワゴン車は、次の交差点を右折するようで、ウインカーを点け車線を変更しています。ボクは直進です。
ワゴン車を追っかけて、「青い炎」のことを告げるべきか、正直、迷いました。
話したって、信じる訳がないか・・・まてよ・・・死ぬなんてことはないにしても、「気をつけて運転した方がいい」なんて、余計なアドバイスをしたほうがいいか、などとも考えました。いや死ぬと決まったわけじゃあるまいし・・・いやいや、こんな話、誰も信じないどころか、明らかにヘンな人扱いされるだろうな、とも思いました。なんの根拠もない不吉な話で、他人を余計な不安に陥れるのは人間としてどうなんだろう・・・とも。
・・・でも・・・
結局、ボクは、また「気のせい、気のせい・・・」と呪文のように、自分に言い聞かせて、渋滞の車列に並んだのでした。
・・・でも・・・また、あの、青い炎の呪縛に、しばらくは、からめとられそうなのです。
2011年10月04日 22:52