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プロフィール
高武森
出生:後原  
誕生日:12月3日(カレンダーの日、奇術の日、妻の日、白いハト記念日だそうです)  
同じ誕生日:今いくよ、長州力、パンチ佐藤・・・だそうです・・・(´;ω;`)ウッ…
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群青 ---- マリンブルー ----

 人の感情は、時として「色彩」から影響をうけることがあるそうです。
 たとえば、アメリカンフットボールなどの激しいスポーツのロッカールームは赤が基調となっていて、試合前の選手の闘志をかきたてるといいます。逆にピンクは心を落ち着かせるそうで、刑務所の壁などに塗られているそうです。



 以前、ボクはある無人島に渡りました。


 無人島といっても陸地から50メートルほどしか離れていなく、しかも周囲100メートル足らずの島で、島というより「離れ岩」といったほうが近い感じでした。その島は1970年代の海洋博ブームを当て込んで当時レジャー施設が造られましたが、海洋博が不発に終わり、結局一度もオープンすることなく放置された島でした。

 ボクの目的は、その取り残された島の残骸を撮影することでした。


 地元の漁師さんに船外機付きの小さな船で島に渡してもらい、二時間後に迎えにきてくれるようお願いし上陸しました。
 真っ青な空に痛いほどの太陽が照りつける真夏でした。島の周辺は真っ白な砂地の浅瀬で、真夏の太陽を倍増して反射しているようでした。


 突貫工事で造ったであろう当時の島の桟橋は半分から折れ、手前に大きく傾いていました。赤さびた鉄筋がようやくコンクリートの塊をつなぎとめているようで、長い間波の浸食をもろに受けているようでした。


 崩れかけた桟橋に気をつけながら島の内部へ歩を進めました。
 島全体がコンクリートの建物で覆われている感じでしたが、近づいて観ると島に元々あったらしい洞窟を利用した一階と、その上部に建てられた二階部分になっていました。


 恐る恐る一階に入ってみました。

 内部は洞窟の地形を巧みに利用した水槽がいくつか並んでいて、どうやらミニ水族館を造ろうとしたようでした。
 外の、ホワイトアウトするほどの明るさと対比するように洞窟内は暗く、不気味でした。
 水槽のガラスはすべて割れ、潮がこびりついた内部に魚や生き物は当然いません。生き物の気配はまったくせず、そのことが一層の不気味さを醸し出しているようでした。生き物の代わりに、何か得体の知れない「モノ」がすべての水槽に詰め込まれているようでした。

 
 洞窟水族館を抜け、二階に上がりました。

 二階部分は、和風レストランをモチーフにしたような感じの造りでした。
 壁は崩れ落ち、床も所々抜けていました。わずかに残った赤いカーペットがどす黒く床に貼りついていました。



 レストランには大きな窓が四方にあり、座敷から海を眺められるようになっていました。窓のガラスは割れはて、窓枠が外の景色を切り取っていました。


 西側の窓から外を眺めたボクは、次の瞬間、記憶が飛んだような錯覚に陥りました。


 景色が「青色」の洪水なのです。見たこともない強烈な「青」が広がっているのです。
 青に飲み込まれ、溺れてしまう感覚なのです。
 そして、視覚が、その青に絡みとられたように身動きができないのです。
 自分の思考や存在が「青」の中に吸収され、溶け込んでしまうほどなのです。
 息の詰まる、畏ろしい「青」なのです。逃げなきゃいけないのに、逃れられない「青」なのです。
 一面の青に張り付けられてしまって身動きがとれないのです。
 色に、足がすくんでしまって動けないのです。

 

 どれほどの時間が経ったのでしょうか・・・



 背後で呼び掛ける声にボクはようやく我に返りました。後ろには送ってもらった漁師の方が立っていました。
 二時間後、という約束だったが、気になって一時間で迎えにきた、と心配そうな顔で言っています。

 気が付けば、ボクは一時間も「青」に魅入られて動けない状態だったのです。


 帰路の船の中、漁師の方が独りごとのように言うのでした。


 「・・・実は、一日だけこの島、オープンしたんですよ。部落(シマ)の人招待してね。みんなで船で渡って。・・・ご馳走食べていたら・・・なんでか、いる子供がみんな、魂(マブイ)落としたようにトゥルバッテよ。外見て、『海怖いって』、『青色が来るって』・・・なんでかねぇ・・・こんな暑い日だったさぁ、自分には分からないけど・・・」

 

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