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プロフィール
高武森
出生:後原  
誕生日:12月3日(カレンダーの日、奇術の日、妻の日、白いハト記念日だそうです)  
同じ誕生日:今いくよ、長州力、パンチ佐藤・・・だそうです・・・(´;ω;`)ウッ…
てぃーだブログ › 高武森バナナ日記 › 日々つれづれ › 赤子の泣き声

赤子の泣き声

 このところ沖縄に接近する台風が強大化しているように思います。

 台風の過去・現在の数値的な比較はよくわかりませんが、ボクの幼かった昭和中ごろの台風は今より凄まじく、猛烈なものでした。


 
 当時、ボクの近所は瓦屋の木造がほとんどで、実家もそうでした。
 台風が近づくと、いっせいに戸袋から雨戸を出して閉め、さらに五寸釘や角材で堅く戸締りをしました。
 散乱しそうな屋外の家財は床下や土間に収納し、飛ばされそうなモノはすべてロープでがっちりと固定していました。それがいつもの台風対策でした。



 ---- ある秋口に台風が襲来しました。


 ラジオの台風情報では、「例年になく強い台風」と伝えていました。

 暴風域に入るのが日暮れ前、という情報だったのでボクらは早々といつもの台風対策を終え、家に籠りました。

 ほどなく停電し、じっとりと湿気を含んだ闇に変わりました。
 そして早目の夕食をろうそくの明かりの下でを済ませました。

 
 ---- 風が徐々に強まっていました。


 最初のうちはトランジスタラジオに耳を傾けたり、トランプや花札で時間をつぶすのですが、そのうちに飽きて、押し黙ってろうそくの炎をぼんやり見つめていました。
 台風の夜の時間はなぜか遅く進む感じでした。


 ---- 古い柱時計が11時を鳴らしています。風はますます強まっていました。

 
 床に入り、目を閉じるのですが眠れません。まとわりつくような湿気で寝苦しい夜でした。
 ゴウッっと鳴った一陣の風で屋根の瓦が飛んだようで、パリンと砕け散る音が聞こえました。


 ---- 夜半に差しかかりましたが、風は一向におさまりません。

 
 飛ばされた瓦の砕ける音が頻繁に聞こえます。
 家の梁が強風でギシギシときしむ音がします。

 電線のピューッという風切り音が一層甲高く響いていました。


 ---- 柱時計が深夜の2時を打っています。


 ゴウッという風音が吹き、外が一瞬静かになった感じがしました。

 と、電線のピューピューっという音にまぎれて、かすかに「ホギャー」っという赤子の声が聞こえたような気がしました。
 
 耳を澄ませると、かすかですが、たしかに赤子の泣き声が風に乗って聞こえてきました。
 夜泣きしているような泣き声でした。小さな泣き声でした。

 「大変だな、台風の夜なのに・・・」
  闇の中で、ボクはつぶやきました。

 「・・・もう早く寝なさい」
 そばで横になっていたおばあちゃんが、静かにたしなめるように言っています。


 
 ホギャーホギャーホギャー、赤子の泣き声は、さっきよりはっきり聞こえてきました。
 聞こえてきたというより、近づいて来ている感じでした。


 「やっぱり泣いているよ、赤ちゃん」
 ボクは、闇の中のおばあちゃんに言いました。

 「いいから、早く寝なさい!」
 おばあちゃんは、小声ですが怒っているような強い口調になっていました。


 ---- 台風の吹き返しになったのか、風向きが変わり猛烈な風雨になっていました。


 外は暴風の吹き荒れれている様で、すべての音を巻き込んでいるような風の轟音でした。


 そんな轟音を切り裂いて、赤ちゃんの泣き声は、さっきよりはっきり大きく聞こえます。
 まるで、雨戸のすぐ外で泣いているかのようでした。
 誰かに抱かれて泣いているようでした。


 ボクは耳を塞ぎ、目を強くつぶって毛布の中に潜りこみ、息を殺しました。
 時の過ぎるのが、ものすごく長く感じられました。




 ---- 台風一過の翌日 -----

 昨夜の出来事を家族に話しました。
 不思議なことに誰も赤ちゃんの泣き声を聞いていないようでした。

 ただ、おばあちゃんだけは困ったような顔で唇を結んでいました。


 あの赤子の泣き声はいったい・・・・・


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2012年09月12日 18:07
 
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