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プロフィール
高武森
出生:後原  
誕生日:12月3日(カレンダーの日、奇術の日、妻の日、白いハト記念日だそうです)  
同じ誕生日:今いくよ、長州力、パンチ佐藤・・・だそうです・・・(´;ω;`)ウッ…
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言霊 ---ことだま---

古の日本では口から発せられた「言葉」に摩訶不思議な力が秘められている、と信じられてきたそうです。特に平安の時代には「言霊」と呼び、魂が宿るもう一つの生きモノとしてとらえていたようです。それだけに、人の言葉には大切なモノが込められてきたと思います。もちろん、沖縄でもそうでした。


時代が経ち、言葉の力はかなり薄れてきて、最近では政(まつりごと)を司る人の言葉でさえ随分と軽く、薄っぺらなモノになってきた感じさえします。


・・・「言霊」とは、少し違うとは思いますが、こんな経験をしたことがあります。


平成に入って間もなくの年でした。
ボクは、那覇からヤンバルの東海岸にある小さな集落に向かっていました。なだらかな傾斜が海に向かって広がった地域で、広大な赤土の畑いっぱいにパイナップルが植えられていました。これから訪ねるのは、その集落のはずれのKさん宅で、ご高齢のKさんに戦前の集落の話をお聞きするのが目的でした。


Kさんは、つい先日ご主人に先立たれ、お子さんたちもそれぞれに独立なされて、独り暮らしをしているおばあちゃんでした。ただ、隣の集落にお嫁に行った娘さんが毎日訪ねて来てくれるとのことで、生活は悠々自適そのもの。日課の畑仕事が楽しみな元気な方、ということを事前に集落の区長さんから教えてもらっていました。


ボクは、区長さんがハガキに書いて送ってくれた地図を頼りに、Kさん宅を探しました。しかし、なかなか見つけることが出来ません。土地勘がないこともありましたが、人口の少ない割にとても広い集落で、広いパイナップル畑にポツンポツンと家屋が点在し、細い農道で繋がれていました。


なにより集落内にほとんど目印らしい目印が無く、肝心のKさん宅はさらに集落はずれの一軒家ということで隣家も無く、人通りどころか、さっきから車一台も通らない有様でした。ボクは途方に暮れていました。Kさんと会う約束の時間は迫っていました。



「まずいな・・・どうしようか・・・」
焦りはピークに達していました。
「そうだ!」
ボクは、区長さんからもらったハガキの隅っこに鉛筆でKさん宅の電話番号が書いてあることを思い出しました。

急いで鉛筆の電話番号に手持ちのPHSから電話しました。
「もしもし、道に迷ってしまって・・・」
ボクは焦りながら切り出しました。

「・・・・」
返答はありませんでした。ザーッザーッとノイズだけが聞こえます。

「ん?圏外かな?混線?」と思いつつ、PHSに耳を強く押しつけます。

と、ノイズの中でかすかな声が聞こえました。男性の声です。年配者のようでした。


電話の小さなかすれた声は、Kさん宅で娘さんと待っていると言い、家までの道順を丁寧にとつとつと教えてくれました。

・・・・電話の声に導かれながら、ボクはようやくKさん宅にたどり着くことができ、車から降りながら、お礼を伝え受話器を切りました。


お宅では、Kさんと娘さんが待っていてくれました。


「電話で助かりました。どなたですかね? 男の人のようでしたけど、区長さんがいらしているのですか?」


娘さんはちょっと怪訝そうな顔をしましたがすぐに首を振りました。傍らでちょこんと正座しているKさんは静かに微笑んでいます。


その日、区長さんは那覇に所用で出かけているそうで、もちろんKさん宅には来ていません。おかしなことに、Kさん宅の電話は、先日旦那さんが亡くなってから解約し、使えない状態だということでした。

「・・・さっき、たった今、電話で道教えてもらったんですよ。男の人に。あれ? なんで?」
ボクは一瞬狐につままれた感じになりました。 

 娘さんは戸惑いと困惑した表情でボクを見ています。一方のKさんは、指先を擦りながら伏し目がちにうつむいています。はにかんでいるようにも見えました。それ以上、ボクは何も聞かず詮索はしませんでした。


 ・・・・夕暮れが近かったので、急いで要件を済ませ、暇乞いをし、Kさん宅を後にしました。


 陽がすっかり落ちた58号を南下し帰路につきました。恩納村の熱田あたりだと思います。胸ポケットのPHSが鳴りました。車を路肩に停め、電話に出ました。

「・・・・ありがとう・・・」
 低い電波ノイズの中、その一言だけ聴きとれたかと思ったら、電話は切れました。あの道を教えてくれた声と似ていました。


・・・電話の声の主は誰だったのか、いまだに分かりません。後日、区長さんにも確認しましたが区長さんでもありませんでした。ボクの勘違いか、たまたま間違い電話だったかもしれません。ただ、ボクは亡くなったKさんのご主人の「言霊」ではなかったのかと、思います。いや、むしろそうであってほしいとさえ思っているのです・・・・

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2011年09月21日 12:03
 
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