人工衛星ウォッチャー
ボクたちの住む地球のはるか上空には、3000とも6000ともいわれる人工衛星が回っているそうです。
その中には、今流行りのGPSのための衛星や気象衛星、放送用のBS衛星などもあり、ボクらの生活に役立っていることは確かでしょう。
ただ、時々、人工衛星がほんとにすべて必要なものかどうか、ふと考えることがあります。
それには、こんな理由があります・・・・・
数年前、ボクは那覇市の波の上近くのファストフード店でちょっと遅い昼食をとっていました。
夏の暑い日でした。
ホットドッグとルートビアの軽い食事を済ませ、時間潰しにファストフード店前のビーチへ下りてみることにしました。仕事着のスーツでしたが、店の駐車場から直接ビーチへ下りる階段があり、ゆっくり歩けば、革靴に砂が入ることはないとビーチへ向かいました。
ビーチへは、階段から砂地を右に折れ、湾岸道路(道路橋)の下を抜けて行くことができたと記憶しています。
平日の昼下がり。ちょっと先の波の上ビーチからは若い歓声が風に乗って聞こえます。海水浴に興じる観光客も多いようでした。
クーラーのよくきいた店内から急に炎天下に出たせいなのか、さっき飲んだルートビアのためなのか、駐車場の階段を下りたときには一気に汗が噴き出していました。汗だくの上、白い砂地の照り返しもきつく、ボクは道路橋下の日陰へ避難することにしました。
ビーチの喧騒とは裏腹に、橋の下には一人の男いるだけでした。痩身の若い男で、タンクトップに短パンにシマゾウリ、真っ黒に日焼けしていました。なぜか立ちつくし、直射日光から隠れるようにして、上空を仰いでいました。
「暑いですね」
ボクは軽く会釈し、ハンカチで汗を拭き拭き言いました。
男はじっと黙ったままで、上空を仰いでいます。
橋下の日陰は海風もあって、涼しく、ボクは汗の引くのを待っていました。ちょっと気まずい空気が漂っていました。
と、唐突に男が話掛けてきました。
「ほら、あれ、見える?」
男は、上空を右手で指差し、左手は日差しを遮るように額の上に乗せたまま、頭だけ振り向いて言います。
上空には、群青の空と白い雲しか見えません。
「橋の三つめの欄干の横から、あの雪だるまみたいな雲・・・ちょうど耳みたいになっているところ?見える?耳のすぐ脇の青空のとこ」
ボクは、男に言われるまま目をこらして、雪だるま雲の耳あたりを凝視しました。
「ね、見えるでしょ?銀色のまぁるい玉。小さいけど」
えっ!と思いつつ、ボクは雲の耳あたりをさらに凝視しました。
驚いたことに、確かに小さいのですが銀色の球体が目視できました。青空にぽつんと銀色の一点が静止しているのです。
「見えます。見えます。何ですか、あれは?まさかUFO?」
ボクは男に聞き返しました。
「ずっと一時間以上動かないから人工衛星だと思うよ。人工衛星だよ。昼間でも結構見つけることできるんだよね」
男は左手で敬礼するように陽を遮りながら見続けています。
「でもさ、アイツらそうやって、いつも監視しているんだよ。俺もそうだけど、みんなをだよ。軍事用のスパイ衛星っていっているけどさ、あんなもの何機も配置して・・・監視されているんだよ、沖縄は。俺が朝から見つけただけで、5機はいるよ5機。ここの上空だけでさ。昨日は7機見つけた。見張られているんだよ。だから俺は、監視の目が届かない橋の下から探すんだよ。見張られるのってイヤだよな・・・」
男がとつとつと語る話は、信ぴょう性があるようで無いようで・・・具体性があるようで無いようで・・・科学的であるようで、無いようで・・・ボクには判断がつきませんでした。
人工衛星ウォッチャーは、那覇から国頭まで移動しながら衛星をチェックし、発見した日時場所を詳細にノートに記して持ち歩いているそうで、ちょっとだけそのノートを見せてもらいました。ボクには読み取れない記号がたくさん記載されていました。ただ、ボクには彼の行動を笑うことができませんでした。
最近は便利さの反面、目に見えない監視社会に不安や疑問が大きくなっていく感じさえします。
・・・・今でも、男は、沖縄の、どこか橋の下、人工衛星の監視の網をくぐりながら、ウォッチしているのでしょうか・・・・・
その中には、今流行りのGPSのための衛星や気象衛星、放送用のBS衛星などもあり、ボクらの生活に役立っていることは確かでしょう。
ただ、時々、人工衛星がほんとにすべて必要なものかどうか、ふと考えることがあります。
それには、こんな理由があります・・・・・
数年前、ボクは那覇市の波の上近くのファストフード店でちょっと遅い昼食をとっていました。
夏の暑い日でした。
ホットドッグとルートビアの軽い食事を済ませ、時間潰しにファストフード店前のビーチへ下りてみることにしました。仕事着のスーツでしたが、店の駐車場から直接ビーチへ下りる階段があり、ゆっくり歩けば、革靴に砂が入ることはないとビーチへ向かいました。
ビーチへは、階段から砂地を右に折れ、湾岸道路(道路橋)の下を抜けて行くことができたと記憶しています。
平日の昼下がり。ちょっと先の波の上ビーチからは若い歓声が風に乗って聞こえます。海水浴に興じる観光客も多いようでした。
クーラーのよくきいた店内から急に炎天下に出たせいなのか、さっき飲んだルートビアのためなのか、駐車場の階段を下りたときには一気に汗が噴き出していました。汗だくの上、白い砂地の照り返しもきつく、ボクは道路橋下の日陰へ避難することにしました。
ビーチの喧騒とは裏腹に、橋の下には一人の男いるだけでした。痩身の若い男で、タンクトップに短パンにシマゾウリ、真っ黒に日焼けしていました。なぜか立ちつくし、直射日光から隠れるようにして、上空を仰いでいました。
「暑いですね」
ボクは軽く会釈し、ハンカチで汗を拭き拭き言いました。
男はじっと黙ったままで、上空を仰いでいます。
橋下の日陰は海風もあって、涼しく、ボクは汗の引くのを待っていました。ちょっと気まずい空気が漂っていました。
と、唐突に男が話掛けてきました。
「ほら、あれ、見える?」
男は、上空を右手で指差し、左手は日差しを遮るように額の上に乗せたまま、頭だけ振り向いて言います。
上空には、群青の空と白い雲しか見えません。
「橋の三つめの欄干の横から、あの雪だるまみたいな雲・・・ちょうど耳みたいになっているところ?見える?耳のすぐ脇の青空のとこ」
ボクは、男に言われるまま目をこらして、雪だるま雲の耳あたりを凝視しました。
「ね、見えるでしょ?銀色のまぁるい玉。小さいけど」
えっ!と思いつつ、ボクは雲の耳あたりをさらに凝視しました。
驚いたことに、確かに小さいのですが銀色の球体が目視できました。青空にぽつんと銀色の一点が静止しているのです。
「見えます。見えます。何ですか、あれは?まさかUFO?」
ボクは男に聞き返しました。
「ずっと一時間以上動かないから人工衛星だと思うよ。人工衛星だよ。昼間でも結構見つけることできるんだよね」
男は左手で敬礼するように陽を遮りながら見続けています。
「でもさ、アイツらそうやって、いつも監視しているんだよ。俺もそうだけど、みんなをだよ。軍事用のスパイ衛星っていっているけどさ、あんなもの何機も配置して・・・監視されているんだよ、沖縄は。俺が朝から見つけただけで、5機はいるよ5機。ここの上空だけでさ。昨日は7機見つけた。見張られているんだよ。だから俺は、監視の目が届かない橋の下から探すんだよ。見張られるのってイヤだよな・・・」
男がとつとつと語る話は、信ぴょう性があるようで無いようで・・・具体性があるようで無いようで・・・科学的であるようで、無いようで・・・ボクには判断がつきませんでした。
人工衛星ウォッチャーは、那覇から国頭まで移動しながら衛星をチェックし、発見した日時場所を詳細にノートに記して持ち歩いているそうで、ちょっとだけそのノートを見せてもらいました。ボクには読み取れない記号がたくさん記載されていました。ただ、ボクには彼の行動を笑うことができませんでした。
最近は便利さの反面、目に見えない監視社会に不安や疑問が大きくなっていく感じさえします。
・・・・今でも、男は、沖縄の、どこか橋の下、人工衛星の監視の網をくぐりながら、ウォッチしているのでしょうか・・・・・
2011年09月16日 19:23