夢の結末
20フィートの小舟を10隻も係留すればいっぱいになりそうな小さな港に僕はいました。
周りに船影はなく、僕の乗っている小さな木造船が一隻、炎天下の桟橋に係留されています。
まだ午前中のようでした。
友人たちが島に渡る、というので、船舶免許を持っていた僕が船頭の役をかってでた感じでした。
島に着くや、友人たちはそそくさと上陸し、「探険だ」とか言って島内に入っていきました。
帰りの心配と船の留守番もあるので、僕は独り船上に取り残されています。
港は、かなり長い時間つかわれいないのか、係船柱は厚い錆が松皮のようにへばり付いています。
波に洗われた桟橋には、大きな岩ガキと海藻がびっしり繁殖しているのですが、桟橋上部は風と雨と紫外線にさらされ、無機質に白っぽくなっています。
タポタポと波が押し寄せるたびに、丸みを帯びた波頭が太陽の鈍い光を反射しています。
上空でミサゴが一羽、ヒュルルーと鳴き、旋回しているのが見えます。
頂が平らな円錐状の島のようで、坂道が網目のように島を覆っています。
何軒かの廃墟が、海に向けられた戦跡のトーチカのように点在しているのが見えます。
一本の坂道を友人たちが登って行くのが見えました。
時々、振り返っては島の景色に感嘆し、坂の上を確認しては口々にしゃべりながら登っていきます。
腕を広げて何か盛んに説明をしている友人もいますが、声は遠く、はっきりとは聞こえません。
坂を登りきった廃屋の一軒に友人たちは入って行きました。
いや、頭が見え隠れしているので家屋の中ではなく、庭で何かしているようです。
上空のミサゴからは見えそうですが、港から伺い知ることはできません。
船上で少しウトウトし、さっきの坂上を見上げると、ちょうど友人たちが下りてくるのが見えました。
ちょっとウトウトしたつもりでしたが、正午をまわっているようです。
島を後にしなければならない時間だと気づきます。
坂を下る友人たちが港近く来たとき、誰かが忘れ物をしたようなジェスチャーで坂上を指さしています。
と、また坂を上り、戻って行くのが見えました。
チッ! 僕は短く舌打ちをし時計を見ます。時刻は二時半を少し回っています。
友人の一人が、さっきの廃屋の前で大きく両手を振ってこちらに合図を送っています。
僕はオーバーに腕時計を指さし、急かします。
僕の合図が届いたのか、今度は、大急ぎで友人たちが坂を下ってきました。
もう少しで船に駆け込むだろうと、上陸時に友人たちが集落へ入っていった垣根の先に視線を落とします。
入り口の先は薄暗く、ウタキのような静寂が漂っています。
ゆるい風が集落入口の垣根を揺らしています。一瞬、友人たちかと思いましたが、風で揺れただけだと気づきます。
遅い。僕はそう感じました。
空でミサゴがヒュルルーと鳴いています。
見上げた上空の強い日差しで、眩暈のように、一瞬目の前が暗くなりました。
薄目で島を仰ぎ見ると坂の途中で、何かが蠢き、走り落ちるように見えました。
友人たちだ!と理解します。
「まだ下っているの?」
一瞬不思議な感覚に包まれます。
慌てて坂を下ってくる姿は、可笑しくさえありました。
可笑しい感情が、一転、僕はすべてを理解し次の瞬間恐怖に襲われます。
いつのまにか島の時空に捕らわれ、出られなくなったと確信します。
急いで小船から桟橋に飛び降り、友人たちを導き寄せようと炎天下の護岸を走ります。
コンクリートの反射光で足元はくらむほどの真っ白な空間に変わり、空中に放り出された錯覚を覚えます。
一瞬、躊躇し立ち止まり、小船を振り返ります。
桟橋の係船柱の脇に、赤錆びたドラム缶のトーテンポールが崩れかけ詰まれています。
そして、トーテンポールの向こう側に係留した船のロープが自然にスルリとほどけ、
船が港の外へゆっくりと流れ出ていくのを立ち尽くして見送っているのです。
------- というのが、僕の見た夢でした --------
周りに船影はなく、僕の乗っている小さな木造船が一隻、炎天下の桟橋に係留されています。
まだ午前中のようでした。
友人たちが島に渡る、というので、船舶免許を持っていた僕が船頭の役をかってでた感じでした。
島に着くや、友人たちはそそくさと上陸し、「探険だ」とか言って島内に入っていきました。
帰りの心配と船の留守番もあるので、僕は独り船上に取り残されています。
港は、かなり長い時間つかわれいないのか、係船柱は厚い錆が松皮のようにへばり付いています。
波に洗われた桟橋には、大きな岩ガキと海藻がびっしり繁殖しているのですが、桟橋上部は風と雨と紫外線にさらされ、無機質に白っぽくなっています。
タポタポと波が押し寄せるたびに、丸みを帯びた波頭が太陽の鈍い光を反射しています。
上空でミサゴが一羽、ヒュルルーと鳴き、旋回しているのが見えます。
頂が平らな円錐状の島のようで、坂道が網目のように島を覆っています。
何軒かの廃墟が、海に向けられた戦跡のトーチカのように点在しているのが見えます。
一本の坂道を友人たちが登って行くのが見えました。
時々、振り返っては島の景色に感嘆し、坂の上を確認しては口々にしゃべりながら登っていきます。
腕を広げて何か盛んに説明をしている友人もいますが、声は遠く、はっきりとは聞こえません。
坂を登りきった廃屋の一軒に友人たちは入って行きました。
いや、頭が見え隠れしているので家屋の中ではなく、庭で何かしているようです。
上空のミサゴからは見えそうですが、港から伺い知ることはできません。
船上で少しウトウトし、さっきの坂上を見上げると、ちょうど友人たちが下りてくるのが見えました。
ちょっとウトウトしたつもりでしたが、正午をまわっているようです。
島を後にしなければならない時間だと気づきます。
坂を下る友人たちが港近く来たとき、誰かが忘れ物をしたようなジェスチャーで坂上を指さしています。
と、また坂を上り、戻って行くのが見えました。
チッ! 僕は短く舌打ちをし時計を見ます。時刻は二時半を少し回っています。
友人の一人が、さっきの廃屋の前で大きく両手を振ってこちらに合図を送っています。
僕はオーバーに腕時計を指さし、急かします。
僕の合図が届いたのか、今度は、大急ぎで友人たちが坂を下ってきました。
もう少しで船に駆け込むだろうと、上陸時に友人たちが集落へ入っていった垣根の先に視線を落とします。
入り口の先は薄暗く、ウタキのような静寂が漂っています。
ゆるい風が集落入口の垣根を揺らしています。一瞬、友人たちかと思いましたが、風で揺れただけだと気づきます。
遅い。僕はそう感じました。
空でミサゴがヒュルルーと鳴いています。
見上げた上空の強い日差しで、眩暈のように、一瞬目の前が暗くなりました。
薄目で島を仰ぎ見ると坂の途中で、何かが蠢き、走り落ちるように見えました。
友人たちだ!と理解します。
「まだ下っているの?」
一瞬不思議な感覚に包まれます。
慌てて坂を下ってくる姿は、可笑しくさえありました。
可笑しい感情が、一転、僕はすべてを理解し次の瞬間恐怖に襲われます。
いつのまにか島の時空に捕らわれ、出られなくなったと確信します。
急いで小船から桟橋に飛び降り、友人たちを導き寄せようと炎天下の護岸を走ります。
コンクリートの反射光で足元はくらむほどの真っ白な空間に変わり、空中に放り出された錯覚を覚えます。
一瞬、躊躇し立ち止まり、小船を振り返ります。
桟橋の係船柱の脇に、赤錆びたドラム缶のトーテンポールが崩れかけ詰まれています。
そして、トーテンポールの向こう側に係留した船のロープが自然にスルリとほどけ、
船が港の外へゆっくりと流れ出ていくのを立ち尽くして見送っているのです。
------- というのが、僕の見た夢でした --------
2011年06月17日 11:33