義足

高武森

2012年04月04日 16:38


 先週、ひょんなことから知人の整形外科医とこんな話題になりました。


 人工の脚、つまり「義足」はどこまで速く走ることができるのか----------------


 話題の発端は、昨年の八月、韓国・大邱で開催された陸上の世界選手権のことです。あのジャマイカのウサイン・ボルトの圧倒的な速さが注目されたのですが、一方で、南アフリカの義足のランナー、オスカー・ピストリウスが健常者のトップアスリートを抑え、爆発的なスピードで準決勝まで勝ち進んだのでした。

そのスピードは、「義足=遅い」というこれまでの常識を覆し、義足の方が速く走れ、フェアじゃない、と憤る選手もいるほどでした。

 
 知人によると、「膝から下の切断の義足で、身体能力がトップアスリートクラスだったら義足の方が、はるかに速い。ボルトの記録も抜けると思いますよ。近い将来、必ずそうなるでしょうね」とのことでした。


 -------------------------------------------------------


 話は、いきなり変わりますが、スペインの小説家、ホセ・デ・エスプロンセダが百八十年以上も昔に書いた小説の中に「義足」というのがあります。

 ストーリーをかいつまんで紹介しますと-------------------

 昔、ロンドンに大金持ちの商人がいました。
 商人は、事故で脚を骨折し切断してしまいます。
 同じころ、義足作りでは右に出るものはいないといわれるほどの素晴らしい腕前を持つ義足職人がいました。金に糸目をつけない商人は、
「自分が義足を身につけているというよりも、義足が自分の体をひとりでに運んでくれるような、要するに、ひとりで勝手に歩きだすほどの脚がほしい」と職人に依頼します。
 三日後、商人の要望通りの義足、つまり、ひとりで勝手に歩きだして止まらない義足を手に入れます。
 望み通りの義足を手に入れた商人は大喜び。早速、義足を着け、あちこち見せびらかしに行くのですが、なにせ義足は勝手に歩き、走り出し、ついには永遠に世界中を駆け巡るようになります。
 今でも、義足を着けたガイコツがピレネー山脈あたりをすごいスピードで駆けまわっているらしい。

 ----------------- といった内容です。


 百八十年前の幻想と現在を比較するつもりはありませんが、未来の義足は、いったいどうなっているんでしょうねぇ・・・



関連記事